立ち向かう振りの妄想癖

読んだ本の感想を雑に放ります(ミステリ多め)。超不定期更新です。

『嘘と正典』 小川哲

内容(amazonより引用)

マルクスエンゲルスの出逢いを阻止することで共産主義の消滅を企むCIAを描いた歴史改変SFの表題作をはじめ、零落した稀代のマジシャンがタイムトラベルに挑む「魔術師」、名馬スペシャルウィークの血統に我が身を重ねる青年の感動譚「ひとすじの光」、音楽を通貨とする小さな島の伝説「ムジカ・ムンダーナ」など6篇を収録。圧倒的な筆致により日本SFと世界文学を接続する著者初の短篇集

 

 

感想(ネタバレなし)

なんだよこの短編集......面白い作品しか入ってないじゃねぇか。
興味深いテーマ選びに熱を帯びた文章、卓越したプロット。彼の宮内悠介の大傑作『盤上の夜』に勝るとも劣らない高水準の作品群を前に、読んでいる最中ずっと胸が躍っていた。

一つ目の「魔術師」の時点で、尋常じゃない筆力が十二分に発揮される。
マジシャン・リドーの魅力もさることながら、外連味あふれる言葉の演出が素晴らしく、実際にマジックショーが目の前で繰り広げられているような臨場感があった。

続く「時の扉」は時間SFの傑作。
謎めいた導入からの展開が巧く、特に”王”の正体が明かされるや唖然とした。
お前か~!

その他も音楽への情熱がこもった「ムジカ・ムンダーナ」、発想が特異な時間SFの表題作と傑作揃い。
(実は一番好きなのだが)「最後の不良」でキレのあるコメディまで読めてしまい、大満足。

SF好きは勿論のこと、ジャンル問わずとにかく面白い話ばかりなので、小説が好きなら迷わずオススメしたい。

 

評価:9点

2024/4/26 読了